50年前のスポーツ経験が、今の骨密度に関係する?|日本人高齢者の研究から考える

「子どもの頃に運動していたことって、大人になってから何か意味があるの?」

そう思ったことはありませんか?

もちろん、

「昔サッカーをしていたから、今も健康!」

と単純に言えるわけではありません。

でも最近の研究を見ていると、

若い頃の運動経験と、何十年後の身体には無関係とは言い切れない

ことが見えてきています。

今回は、日本人を対象にした研究から、

「子どもの頃・若い頃に身体を動かす意味」

について考えてみます。


50年以上にわたって追跡された日本人アスリート

まず、とても興味深い研究があります。

2024年に『Bone』という骨の専門誌に発表された研究です。

対象となったのは、

1964年の東京オリンピックに出場した日本人選手たち。

なんと、

50年以上にわたって健康状態を追跡

しています。

最終的な調査では、

男性の平均年齢は約76歳。

女性は約74歳。

つまり、

「若い頃にトップアスリートだった人たちは、70代になったとき、骨がどうなっているのか?」

を見ることができたわけです。


70代になっても、骨密度が高かった

研究で非常に興味深かったのが、

元オリンピック選手たちは、高齢になっても骨密度が比較的高い状態を維持していた

ということ。

全身、腰椎、骨盤、上肢、下肢などの骨密度を調べたところ、

男女とも平均Zスコアが0を上回っていました。

さらに、

筋肉量や除脂肪量、握力なども比較的高い状態でした。


じゃあ「昔のスポーツ」が骨を守ったの?

ここは少し慎重に考える必要があります。

この研究だけを見て、

「子どもの頃にスポーツをすれば、50年後も骨密度が高くなる!」

と断言することはできません。

なぜなら、

元オリンピック選手には、

もともとの身体能力が高かった人が多いこと。

競技生活以外の生活習慣も違うこと。

現在の体重や筋肉量なども骨密度に影響すること。

など、さまざまな要因があるからです。

研究でも、

現在の筋肉量や身体的特徴などが高い骨密度の一因になっている可能性

が示されています。

だからこそ、

「昔スポーツをしていたから骨密度が高い」

と単純化するのではなく、

長い人生の中で、身体を動かしてきた経験がどんな意味を持つのか

という視点で見ることが大切です。


さらに面白い「日本人高齢者」の研究

もう一つ、ATHBASEスポーツ教室としてぜひ紹介したい研究があります。

2023年に発表された、

Bunkyo Health Study

です。

対象は、

65〜84歳の日本人1,596人。

男性681人、

女性915人。

そして、

「思春期にどんなスポーツをしていたのか?」

と、

「現在の骨密度」

との関係を調べました。


思春期に「バスケ・バレー」をしていた人では?

研究では、

思春期にバスケットボールをしていた人は、高齢期の大腿骨頸部の骨密度が高いことと関連

していました。

これは男性だけではありません。

女性でも同様の関連が確認されています。

さらに、この研究ではバレーボールについても、

思春期のスポーツ経験と高齢期の骨密度との関連が検討されています。

なぜでしょう?

一つ考えられるのが、

ジャンプや着地など、骨に繰り返し刺激が加わる運動

です。

バスケットボールやバレーボールでは、

走る。

止まる。

跳ぶ。

着地する。

方向を変える。

という動きが繰り返されます。

こうした「衝撃を伴う運動」は、

骨にとって重要な刺激になります。


「骨」は刺激を受けて変化する

骨は、

ただカルシウムを食べていれば強くなる、

というものではありません。

もちろん、

カルシウムやビタミンDなどの栄養は大切です。

でも同時に、

身体を動かして、骨に力学的な刺激を与えること

も重要です。

だから、

走る。

跳ぶ。

着地する。

片足でバランスを取る。

方向を変える。

こうした動きにも意味があります。


小学生の「遊び」にも意味がある

ここで大切なのは、

「じゃあ小学生からバスケやバレーをやらせなきゃ!」

という話ではありません。

むしろ逆です。

子どもの頃は、

いろいろな動きを経験すること。

これが大切です。

鬼ごっこ。

かけっこ。

ジャンプ。

縄跳び。

ボール遊び。

公園の遊具。

登る。

くぐる。

転がる。

片足で立つ。

こうした遊びの中にも、

身体にさまざまな刺激が入っています。


「スポーツをする」より前に、身体を使う経験を

ATHBASEスポーツ教室では、

特定の競技だけを教えることを目的にはしていません。

なぜなら、

子どもの身体は、

サッカーだけでできているわけでも、

野球だけでできているわけでも、

バスケットボールだけでできているわけでもないからです。

走る。

跳ぶ。

投げる。

捕る。

転がる。

支える。

止まる。

バランスを取る。

いろいろな動きを経験する。

その経験が、

将来スポーツを始めたときにも、

その先の身体づくりにも、

つながっていきます。


「50年前」が教えてくれること

今回紹介した研究で、

一つ面白いことがあります。

それは、

研究対象者が、今の子どもたちとは全く違う時代を生きてきた人たちだということ。

1964年の東京オリンピック。

そこから50年以上。

その間に、

生活環境も、

スポーツ環境も、

食生活も、

大きく変わりました。

それでも、

70代になった元アスリートたちの身体を調べると、

若い頃からの身体活動と骨・筋肉との関係を考える材料が見えてきます。


子どもの運動は「今のため」だけじゃない

子どもの運動というと、

「運動会で速く走れるように」

「サッカーが上手になるように」

「体力をつけるために」

という目的を考えがちです。

もちろん、

それも大切です。

でも、

子どもの身体は、

今だけのものではありません。

今つくっている身体の土台が、

10年後、

20年後、

さらにその先の身体につながっていきます。

だからこそ、

子どもの頃に身体を動かすことを、将来への投資として考えてみてもいい。

そう思わせてくれる研究です。


ATHBASEが大切にしたいこと

ATHBASEスポーツ教室では、

「将来の骨密度を高くするためにジャンプしましょう」

という指導をしているわけではありません。

もっとシンプルです。

子どもが、いろいろな動きを経験すること。

そして、

「身体を動かすって楽しい!」

と思えること。

その中で、

走る。

跳ぶ。

着地する。

支える。

バランスを取る。

方向を変える。

さまざまな刺激を身体に経験させていく。

その積み重ねが、

今の運動能力だけではなく、

これから長く付き合っていく身体の土台

にもつながっていくと考えています。


50年後の身体は、今日からつくられている

50年後、

今の子どもたちは何歳になっているでしょうか?

今はまだ、

「走るのが楽しい!」

「ジャンプできた!」

「もっとやりたい!」

と言っている子どもたち。

でも、

その身体は少しずつ成長しています。

今日走ったこと。

今日跳んだこと。

今日転んで、また立ち上がったこと。

そんな一つひとつの経験が、

未来の身体につながっていくのかもしれません。

子どもの運動は、今日のためだけじゃない。

50年後の身体を考えても、

今、身体を動かすことには意味があります。


参考文献

  1. Hoshikawa A, et al. Former Olympians had remained on high bone mineral density for a long period: Consecutive checkup of the 1964 Tokyo Olympic Japanese contestants for over 50 years. Bone. 2024;187:117203.
  2. Otsuka H, et al. Playing basketball and volleyball during adolescence is associated with higher bone mineral density in old age: the Bunkyo Health Study. Frontiers in Physiology. 2023;14:1227639.
  3. Mori T, et al. Associations of Exercise Habits in Adolescence and Old Age with Risk of Osteoporosis in Older Adults: The Bunkyo Health Study. Nutrients. 2021.
  4. 小林ほか. Which element of physical activity is more important for determining bone growth in Japanese children and adolescents: the degree of impact, the period, the frequency, or the daily duration of physical activity? Bone. 2008.
  5. 宮元章次・石河利寛. 成長期の規則的な運動が大学生の骨密度に及ぼす効果. 体力科学. 1993;42(1):37-45.

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