早くから1つのスポーツに絞るべき?|「専門性」より先に大切にしたいこと

「将来、サッカー選手になってほしい」

「野球が上手くなってほしい」

「バレーボールで活躍してほしい」

そう思ったら、できるだけ早く、その競技を始めたほうがいい。

そんなイメージを持っていませんか?

もちろん、好きなスポーツを思いっきり楽しむことは素晴らしいことです。

でも、「早くから1つの競技に絞ること=将来の成功につながる」とは、必ずしも言えません。

むしろ、子どもの時期だからこそ、

いろいろな動きを経験すること。
いろいろなスポーツに触れること。

が大切だと考えられています。


「早く始めるほど上手くなる」は本当?

例えば5歳からサッカーを始めた子と、10歳からサッカーを始めた子。

単純に考えれば、「5歳から始めたほうが5年も長く練習しているから有利」と思いますよね。

確かに、早く始めることでその競技の経験は増えます。

でも、スポーツの世界では、「経験年数が長い=将来トップになれる」とは限りません。

2022年に発表された大規模なシステマティックレビュー・メタ解析では、ジュニア期とシニア期のエリート選手を比較しています。

その結果、ジュニア期に高い成績を出していた選手と、成人後に高い成績を出した選手では、育ってきたパターンが異なる

ことが示されています。

つまり、

「今、強い子」をつくることと、
「将来、伸び続ける選手」を育てることは、同じではない

ということです。


じゃあ、何が大切なの?

ここで出てくるのが、「スポーツ・サンプリング」という考え方です。

簡単に言えば、子どもの時期に、いろいろなスポーツや身体活動を経験すること。

例えば、

サッカーをやって、

夏は水泳。

冬はスキー。

休みの日は鬼ごっこ。

公園では登ったり、ぶら下がったり、ジャンプしたり。

そんな経験です。


「別のスポーツ」が、実は今の競技につながる

例えば、サッカーをしている子。

サッカーだけをしていると、「サッカーの練習をしなきゃ」となります。

でも、

鬼ごっこをすると、

走る。

止まる。

方向を変える。

相手を見る。

逃げる。

追いかける。

という動きが自然に入ります。

バスケットボールをやれば、

跳ぶ。

着地する。

投げる。

捕る。

相手との距離を取る。

という経験ができます。

水泳なら、

身体を水中でコントロールする経験。

スキーなら、

バランスを取りながら速度や方向を調整する経験。

一見すると、

「サッカーとは関係ない」

ように見えることでも、

身体の使い方という視点で見ると、つながっていることがあります。


いろいろなスポーツをすることは「遠回り」ではない

ここは、ぜひ保護者の方に知ってほしいところです。

複数のスポーツをすることを、「1つの競技に集中できていない」と考える必要はありません。

むしろ、身体の使い方を増やしている期間と考えることもできます。

2020年のシステマティックレビュー・メタ解析では、7~18歳の5,736人を対象に、複数競技を経験する「sport samplers」と、1競技に専門化した選手を比較。

複数競技を経験していた選手のほうが、スポーツ傷害のリスクが低かったことが報告されています。

また、エリート・プロ・オリンピック選手を対象とした2022年のシステマティックレビューでも、調査された多くの競技で、若年期に複数競技を経験した選手のほうが、その後のパフォーマンスに良い傾向が報告されています。

もちろん、

「複数競技をやれば必ず上手くなる」

という単純な話ではありません。

でも、「早く1つに絞らなければ将来困る」という考え方にも、十分な根拠があるわけではありません。


もう一つ大切なのが「ケガ」

子どもの身体は、大人の身体とは違います。

成長している途中です。

そんな時期に、同じ動きを、同じ場所に、何度も繰り返す。

特に、年間を通して1つの競技だけに集中するような「早期専門化」は、オーバーユース障害との関連が研究されています。

2018年のシステマティックレビュー・メタ解析では、専門化の程度が高い若年選手ほど、オーバーユース障害のリスクが高いことが報告されています。高度な専門化では、低い専門化と比べてリスクが約1.8倍でした。

また、2020年の研究でも、複数競技を経験する選手は、1競技に専門化した選手と比較して傷害リスクが低いという結果が示されています。

だからこそ、

「もっと練習させる」だけではなく、「違う動きを経験させる」

という考え方も大切になります。


もちろん「好きな競技をやるな」という話ではない

ここは誤解してほしくありません。

私は、

「サッカーだけやっちゃダメ」

「野球だけじゃダメ」

と言いたいわけではありません!!

子どもが、「サッカーが大好き!」なら、思いっきりやればいい。

それは本当に素晴らしいことです。

大切なのは、

「サッカーが好きだから、サッカー以外を経験してはいけない」

という状態にしないこと。

好きな競技を続けながら、たくさん遊び、競技以外の動きも経験しておく。

それだけでも、身体の経験値は変わってきます。


「専門競技+いろいろな動き」が面白い

ATHBASEスポーツ教室が大切にしたいのも、ここです。

例えば、野球少年もATHBASEに通ってくれています。

ここで野球の練習をするわけではありません。

教室ではいろいろな動きを経験するので、

「野球の練習とは違うけど、身体の使い方を増やしている」

という時間になります。

子どもの時期は「完成させる時期」ではない

年代や競技レベルが上がるにつれて、

「正しいフォーム」

「効率的な動き」

「競技に必要な筋力」

などを考えることが増えてきます。

でも、子どもの時期に大切なのは、身体の使い方を一つに決めることではありません。

いろいろ試す。

失敗する。

違うやり方を試す。

できるようになる。

また別の動きを経験する。

そうやって、

「身体の引き出し」を増やしていく。

その先に、競技の技術がある。そんな順番も大切だと思っています。


子どもの可能性を、今の競技だけで決めない

子どもの頃に、何のスポーツをやっていたか。何歳から始めたか。今、どれくらい上手いか。

もちろん、それも一つの要素です。

でも、それだけが未来を決めるわけではありません。

だからこそ、「早く専門化する」ことだけを急がなくていい。

好きなスポーツを楽しむ。

遊ぶ。

いろいろな動きを経験する。

違うスポーツにも触れてみる。

そして、「やってみたい」と思ったことに挑戦する。

そんな環境が、子どもの可能性を広げてくれるのではないでしょうか。

ATHBASEスポーツ教室は、

今の競技力だけを見るのではなく、これから先、どんなスポーツにも挑戦できる身体と経験を育てる場所

でありたいと考えています。


参考文献

  • Barth M, Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. Predictors of Junior Versus Senior Elite Performance are Opposite: A Systematic Review and Meta-Analysis of Participation Patterns. Sports Medicine. 2022.
  • Carder SL, et al. The Concept of Sport Sampling Versus Sport Specialization: Preventing Youth Athlete Injury: A Systematic Review and Meta-analysis. American Journal of Sports Medicine. 2020.
  • Bell DR, et al. Sport Specialization and Risk of Overuse Injuries: A Systematic Review With Meta-analysis. Pediatrics. 2018.
  • McLellan M, Allahabadi S, Pandya NK. Youth Sports Specialization and Its Effect on Professional, Elite, and Olympic Athlete Performance, Career Longevity, and Injury Rates: A Systematic Review. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2022.

※研究では、複数競技への参加や早期専門化について一定の傾向が示されていますが、すべての競技・すべての子どもに同じ結果が当てはまるわけではありません。競技特性、練習量、年齢、成長段階、本人の興味などを含めて考えることが大切です。

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