
「子どもの運動って、今の体力をつけるためのものですよね?」
もちろん、それも大切です。
でも、最近の研究を調べていて、「子どもの頃に身体を動かすことは、もっと先の未来にも関係しているのでは?」と考えさせられる研究がありました。
その一つが、「骨」です。
骨は、大人になってから育てればいい?
実は、そう単純ではありません。
骨量は、子どもの頃から思春期にかけて大きく増えていきます。
そして若年成人期に「最大骨量(peak bone mass)」に近づき、その後は年齢とともに徐々に減少していきます。
つまり、将来の骨の健康を考えるなら、子どもの頃からの生活も無関係ではない。ということです。
国際骨粗鬆症財団(IOF)も、子ども・思春期の運動と栄養は骨量を高め、将来的な骨粗鬆症リスクを減らすために重要だとしています。
特に、ジャンプ・走る・階段昇降など、骨に荷重や衝撃が加わる運動が紹介されています。
では、どんな運動が骨に刺激を与えるの?
一つの要素として取り上げられているのが、「ジャンプ」です。
2001年に発表されたランダム化比較試験では、5.9〜9.8歳の子ども89人を対象に、7か月間、週3回のジャンプ運動を行いました。
ジャンプ群は、1回の運動で100回のジャンプを行い、対照群はストレッチを実施。
その結果、
ジャンプ群では、
・大腿骨頸部の骨塩量
・腰椎の骨塩量
の増加が対照群より大きくなりました。
つまり、
子どもの「跳ぶ」という動きそのものが、骨に刺激を与える可能性がある。
ということです。
女の子では、さらに興味深い
特に注目したいのが、初経前〜初期思春期の女子です。
2002年の研究では、初経前および初期思春期の女子を対象に、週3回・10分程度のジャンプ運動を7か月間実施。
初期思春期の女子では、大腿骨頸部や大転子部の骨密度が、対照群より大きく増加しました。
さらに、骨の断面積などの構造変化によって、骨の曲げに対する強さにも変化がみられました。
ここで大切なのは、「女の子は初経前に激しいトレーニングをすればいい」という意味ではありません。
むしろ逆です。
成長期の女子に必要なのは、無理なトレーニングではなく、遊びや運動の中で、自然に走る・跳ぶ・着地する・方向を変えるといった経験を積むこと。
ATHBASEスポーツ教室では、ここを大切にしたいと考えています。
そして、もっと驚く研究が!!
1998年の研究では、思春期前の女子体操選手について調査しています。
思春期前の女子体操選手は、体重を支える部位の骨密度が高く、さらに競技を引退した女性でも、一般の女性より高い骨密度が残っていました。
研究では、引退から平均8年程度経過していても、その差が維持されていました。
つまり、成長期につくられた骨への刺激が、その後も何らかの形で残る可能性がある。ということです。
もちろん、これは体操選手を対象にした研究です。
だから、
「子どもに体操をさせれば将来骨粗鬆症にならない」
という話ではありません。
でも、
成長期に骨へ適切な刺激を与えることの意味
を考える上では、とても興味深い研究です。
「50〜60年後」にまで話はつながる?
ここで、さらに面白い日本の研究があります。
2023年に発表された「Bunkyo Health Study」です。
対象は、
65〜84歳の日本人1,596人。
そして、
「中学生・高校生の頃に、どんなスポーツをしていたか?」
と、
「現在の骨密度」
を調べました。
すると、
思春期にバスケットボールをしていた人は、高齢期の大腿骨頸部の骨密度が高い
という関連が確認されました。
さらに女性では、
思春期のバレーボール経験と、高齢期の腰椎骨密度
にも関連がみられました。
研究対象者が中高生だったのは50〜60年ほど前。
つまり、
50〜60年前のスポーツ経験と、現在の骨密度との関連
を見た研究です。
これはかなり興味深いですよね。
ただし、この研究は横断研究なので、
「バスケットボールをしたから50年後に骨密度が高くなった」
と断定することはできません。
食事、体重、現在の運動習慣、遺伝など、他の要因も関係している可能性があります。
それでも、
「子どもの頃の運動経験を、今だけの問題として考えなくてもいいのでは?」
という大きなヒントになります。
子どもの運動は「今」だけを見るものではない
子どもの運動について話すとき、
「速く走れるようになった」
「ジャンプ力が上がった」
「運動会で活躍できた」
という変化は、とても分かりやすいです。
でも、それだけではありません。
今日走った。
今日跳んだ。
今日転んだ。
今日バランスを崩した。
今日着地した。
今日身体を思い切り動かした。
そんな一つひとつの経験が、
成長していく身体そのものへの刺激
になっています。
「将来のために運動する」必要はない
だからといって、「将来の骨のために、今から頑張らせなきゃ!」と考える必要はありません。
むしろ、子どもが身体を動かすことを好きになること。これが一番大切です。
「外で遊びたい」
「もう一回やりたい」
「今度はもっと高く跳びたい」
「鬼ごっこしたい」
そんな気持ちの中に、結果として身体への刺激が生まれます。
ATHBASEがつくりたいのは「未来まで続く身体の経験」
ATHBASEスポーツ教室では、
特定のスポーツだけを上達させるのではなく、
子どもの時期にしかできない、
「いろいろな身体の経験」
を大切にしています。
走る。
跳ぶ。
投げる。
支える。
転がる。
登る。
止まる。
方向を変える。
バランスをとる。
こうした経験は、
今の運動能力だけでなく、
その先の身体づくりにもつながっていく可能性があります。
だから、
「子どもの運動って、今できるようになるためだけじゃない。」
ATHBASEは、そう考えています。
今日の「楽しい」が、
明日の「できた!」になり、
そして、
その経験が未来の身体をつくっていく。
そんな運動を、子どもたちに届けたいと思っています。
おうちでも「跳ぶ」遊びを楽しむなら
子どもの運動は、特別なトレーニングだけでなく、日常の遊びの中で身体を動かすことも大切です。
「外で遊ぶ時間がなかなか取れない」
「雨の日でも身体を動かしてほしい」
そんなときに、家庭で取り入れやすい遊びの一つがジャンプ遊びです。
ジャンプを繰り返しながら、
・身体を上下に動かす
・バランスを取る
・着地をコントロールする
・身体の位置を感じる
といった経験ができます。
もちろん、それだけで「骨が強くなる」という単純な話ではありません。
大切なのは、子どもが楽しみながら、日常的に身体を動かす機会を増やすこと。
「今日は何して遊ぼう?」
というときの選択肢の一つとして、家庭に取り入れてみるのもいいかもしれません。
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参考にした主な研究
Fuchs RK, Bauer JJ, Snow CM. (2001)
Jumping Improves Hip and Lumbar Spine Bone Mass in Prepubescent Children: A Randomized Controlled Trial.
Journal of Bone and Mineral Research, 16(1), 148–156.
Petit MA, et al. (2002)
A Randomized School-Based Jumping Intervention Confers Site and Maturity-Specific Benefits on Bone Structural Properties in Girls.
Journal of Bone and Mineral Research, 17(3), 363–372.
Bass S, et al. (1998)
Exercise Before Puberty May Confer Residual Benefits in Bone Density in Adulthood: Studies in Active Prepubertal and Retired Female Gymnasts.
Journal of Bone and Mineral Research, 13(3), 500–507.
Otsuka H, et al. (2023)
Playing basketball and volleyball during adolescence is associated with higher bone mineral density in old age: The Bunkyo Health Study.
Frontiers in Physiology, 14.
McVeigh JA, et al. (2019)
Organized Sport Participation From Childhood to Adolescence Is Associated With Bone Mass in Young Adults From the Raine Study.
Journal of Bone and Mineral Research.
※本記事は研究結果を一般向けに紹介したものであり、特定の運動によって将来の骨粗鬆症や骨折を予防できることを保証するものではありません。