
「うちの子は運動が得意!」
「同年代の中でもスポーツが上手い!」
そんな子を見ると、
「このまま頑張れば、将来もきっと活躍できる」
と思いたくなりますよね。
でも、実はスポーツ科学の研究を見ると、そんなに単純ではないことが分かっています。
小学生の「今の上手さ」は、将来をどこまで予測できる?
2023年に『Sports Medicine』に掲載された研究では、
13,392人のアスリートを対象に、子ども・ジュニア期の競技成績と、その後のシニア期の競技成績との関係
が調べられました。
これは129の効果量をまとめたシステマティックレビュー&メタ解析です。
そこで分かったのは、
ジュニア期の競技成績と、シニア期の競技成績の関連はかなり小さい
ということ。
研究では、ジュニア期の成績がシニア期の成績を説明できた割合は、全体としてわずか2.2%でした。
もちろん、「子どもの頃に上手いことには意味がない」という話ではありません。
ただ、「今、上手い=将来も上手い」とは言い切れないということです。
成人の世界クラスの選手は?
2022年に発表された別のシステマティックレビュー&メタ解析では、
71研究・9,241人のアスリート
を対象に、子ども〜青年期のスポーツ経験と、その後の競技レベルとの関係を調べています。
そこで、とても興味深い結果が出ています。
成人の世界クラス選手は、子ども〜青年期に、
複数のスポーツを経験している傾向
がありました。
また、
メイン競技を始める時期が遅い
メイン競技だけの練習量が少ない
といった特徴も見られました。
ジュニア世代を見てみると…
ここが、この研究の面白いところです。
ジュニア期だけを見ると、
競技成績が高い子ほど、メイン競技を早く始め、メイン競技の練習量も多い
という、成人選手とは逆の傾向が見られました。
つまり、
「今、強い(活躍している)子」と
「将来、強い(活躍できる)選手になる子」
では、成長していく過程が同じとは限らないということです。
だから、子どもの成長は「今」だけで判断しない
例えば、小学4年生。
Aくんはサッカーがものすごく上手。
試合でも活躍している。
一方でBくんは、
サッカーもするけれど、
鬼ごっこをしたり、
公園で遊んだり、
水泳をしたり、
ジャンプしたり、
いろいろな身体の動きを経験している。
今だけを見れば、
Aくんのほうが「運動ができる子」に見えるかもしれません。
でも、5年後の結果まで、今の順位だけで決めることはできません。
2023年の研究でも、ジュニア期の成績がシニア期の成績を予測する力は全体として非常に小さく、特に若い年代ほど関連が弱くなっていました。
「今の上手さ」だけを追いかけない
ここで考えたいのが、「今、何のスポーツが上手いか?」だけではなく、
「これから、どんな身体の経験をするか?」ということです。
いろいろなスポーツを経験した。
いろいろな遊びをした。
こうした経験の一つひとつが、子どもの身体に蓄積されていきます。
もちろん、好きなスポーツを一生懸命練習することは素晴らしいことです。
早くから競技を始めることが、すべて悪いわけでもありません。
大切なのは、「早く上手くすること」だけを、子どもの成長のゴールにしないこと。
今できることだけではなく、これからできるようになること。
まだ経験していない動き。
これから出会うスポーツ。
そういった「これからの可能性」にも目を向けてあげたい。
ATHBASEスポーツ教室が大切にしているのも、まさにそこです。
子どもの今の能力だけを見るのではなく、これからの可能性を広げるための経験を増やす。
では、「具体的に、どんな動きを経験しておくといいのか?」
次回はここを掘り下げます。
参考文献
Barth M, Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. Predictors of Junior Versus Senior Elite Performance are Opposite: A Systematic Review and Meta-Analysis of Participation Patterns. Sports Medicine. 2022;52:1399–1416.
Barth M, Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. Quantifying the Extent to Which Junior Performance Predicts Senior Performance in Olympic Sports: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. 2024;54:95–104.
ATHBASEスポーツ教室 代表 河江 将司
(理学療法士 / 認定スクールトレーナー)
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